【産業医の上級資格?】労働衛生コンサルタントって何?

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労働衛生コンサルタントとは?

   

 労働衛生コンサルタントは労働衛生のスペシャリストとして、労働者の安全衛生水準の向上のため、事業場の診断・指導を行う国家資格(士業)です。

 労働衛生コンサルタントは①保健衛生②土木・建築の2区分に分類されます。今回は①保健衛生に限定した話をします。

労働衛生コンサルタントは工場衛生部門の管理職、医師、保健師などさまざまな背景を持った人が取得します。

医師が労働衛生コンサルタント(保健衛生)取得すると永年産業医資格を得ることができます。

そのため近年では医師の受験者が急増しています。

一方で労働衛生コンサルタントは合格率が30%程度という超難関資格です。

今回は医師の間で話題となりつつある労働衛生コンサルタント業務内容受験方法試験の概要取得するメリット労働衛生コンサルタントと産業医資格の関係について解説していきます。

業務内容

 労働衛生コンサルタントは企業や組織に対して労働者の健康と安全を保つためのアドバイスや支援を提供する専門家です。

 以下のような業務のコンサルティングを行います。

受験方法

受験資格:医師であれば誰でも受験することができます。

受験申請書の入手:日本労働安全衛生コンサルタント会に「受験申請書とその作り方」を請求します。

受験時期:【筆記】10月  【口述】1月(大阪) 2月(東京)

受験料:24,700円

受験会場

  • 【筆記】北海道(北海道安全衛生技術センター)、宮城県(東北安全衛生技術セ ンター)、東京都(ベルサール渋谷ファースト)、愛知県(中部安全衛生 技術センター)、兵庫県(神戸サンボーホール)、広島県(中国四国安全 衛生技術センター)、福岡県(九州安全衛生技術センター)
  • 【口述】大阪府(エル・おおさか)、東京都(東京国際フォーラム)

試験の概要

試験は筆記試験口述試験で構成されています。労働衛生の知識のみならず実務経験などを問われ、労働衛生に精通していないと合格は難しいと言われています。労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格率は約30%と言われています。

医師であり、医師会の「産業医講習会」を受講した場合は筆記試験をすべて免除することができます。

産業医講習会

 産業医資格を取るための「産業医学基礎研修会」とは別の講習会です。

日本医師会館にて毎年8月に3日間開催されます。こちらを受講すれば労働衛生コンサルタントの筆記試験は全免除となります。

産業医講習会で筆記免除することが可能ですが・・・

筆記の知識は口述試験でも必要となるため「「筆記試験&口述試験」で受験した方が効率的かつより確実に合格することができます。

今回は「筆記試験&口述試験」で労働衛生コンサルタンを受験するパターンについて解説します。

筆記試験

筆記試験は3つの試験科目で構成されています。

①労働衛生一般(択一式)
②健康管理(記述式)
③労働衛生関係法令(択一式)

医師である場合は①労働衛生一般(択一式),②健康管理(記述式)は免除され、③労働衛生関係法令(択一式)のみが受験科目となります。

口述試験

 面接試験において関係法令のみならず労働衛生全般について聞かれます。例えば以下の通りです。

実務経験に基づいた知識(局所排気装置の条件や防護マスクの選択方法など)も聞かれるため表面的な知識だけでなく実務経験を含めた入念な対策が必要となります。

労働衛生コンサルタントの記述試験と口述試験の具体的な勉強方法についてはこちらを参照してください。

労働衛生コンサルタントを取得するメリット

・労働衛生に関する専門的な知識を体系的に身につけられる

 一般的な産業医資格は講習会を受講するだけで取得できます。受け身でも取れる資格ですので産業医のクオリティを保証できるかは怪しいです。労働衛生コンサルタントであれば、合格率30%の難関をくぐり抜けてきた人材ですので労働衛生の専門的な知識をしっかり身につけていると言えます。

 また、産業医は健康管理がメインの仕事ですが、労働衛生コンサルタントは3管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)5管理(3管理+労働衛生教育、統括管理)に関する広く深い専門的知識を習得しているため一般的な産業医よりも俯瞰的な観点から分析することができます。

・更新不要の産業医資格を取得できる

 医師会認定産業医などは5年ごとに更新する必要があるため、定期的に講習会に参加しなければいけません。労働衛生コンサルタントの場合は更新なしの国家資格ですので永年資格となります。更新制でないことで労働衛生コンサルタントの質の劣化を心配する声もありますが、労働衛生コンサルタントを取得する医師は労働衛生への関心が高いため、自発的に労働衛生学習を継続する場合が多く、更新がなくとも知識や質は維持されやすいと考えられます。

・産業医としての活躍の場が広がりやすい

 労働衛生コンサルタントを取得していることは産業医としての知識と経験のクオリティの高さを示す根拠の1つとなります。有害作業を多く行う事業所では産業医に専門的な技能を求めている場合も多く、労働衛生コンサルタントを取得していることで案件獲得しやすくなる場合があります。また、専門性が高くなるほど案件の単価も高くなる傾向があるので報酬のアップにもつながります。

労働衛生コンサルタントと産業医資格の関係

まずは医師が産業医になる方法を見てみましょう。

産業医になるためのルートは労働安全衛生規則で定められています。

簡単にまとめると以下の5つのコースがあります。

  • 日本医師会認定 産業医学基礎研修
  • 産業医学基本講座
  • 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
  • 大学で労働衛生を担当する教官
  • 産業医科大学卒業

医師が労働衛生コンサルタント(保健衛生)を取得すると産業医の要件を満たすことになります。

また、先ほども述べましたが労働衛生コンサルタントを取得すると更新不要の永年産業医資格が手に入ります。日本医師会認定産業医とは異なり更新手続きや更新単位が不要になります。昨今では更新のための講習予約が人気で取りづらいです。日本医師会認定資格から労働衛生コンサルタントに移行して産業医資格を維持するのも良い策かもしれません。

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この記事を書いた人

株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役・産業医 岩見謙太朗

北海道大学医学部を卒業後、日本最北端の地、稚内にて臨床医として研鑽を積む。
製造業系、福祉系の事業所にて産業医実務を積み、株式会社いわみ産業医事務所として独立。産業医業務のみならず健康経営コンサル業務、人材採用コンサルティングを行う。僻地の病院の人材採用を倍率1倍以上にV字回復させた実績もある。

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