レーザー光線業務の特殊健康診断の項目と対象者について【産業医がわかりやすく解説】

事業場で扱うレーザー光線は計測などに用いる微細なものから加工や切断に用いる高エネルギーなものまで様々です。レーザー光線の出力レベルによって健康診断の対象者と項目は変わってきます。今回はレーザー光線のクラスごとの健康診断の違いについて解説していきます。

目次

レーザー光線のクラス分類

レーザ光線には、使用者への傷害を防止するための安全規格が設けられており、波長とエネルギーのレベルによってクラス分けがされています。健康診断に用いるクラス分類は日本産業規格(JIS)に基づいて行われています。

クラスの数字が大きくなるにつれてレーザーのエネルギーは高くなり健康上のリスクは高まります。

クラス波長レーザー光の特徴
クラス1M180nm ~ 1mm目に見える波長のレーザー光を使用し、直接見ることは安全。ただし、光学機器(レンズなど)を通して見ると危険。
クラス2M400nm ~ 700nm目に見える波長のレーザー光を使用し、瞬き反射で目を守れる程度の出力。ただし、光学機器を通して見ると危険。
クラス3R180nm ~ 1mm目に見える波長のレーザー光を使用し、直接見ると目にダメージを与える可能性があるが、出力が限定されている。
クラス3B180nm ~ 1mm目に見える波長および見えない波長のレーザー光を使用し、直接見ると目や皮膚に重大なダメージを与える可能性がある。
クラス4180nm ~ 1mm非常に高出力のレーザー光を使用し、直接見ることも、反射光を浴びることも、非常に危険。目や皮膚だけでなく、火災のリスクもある。

対象者と健診項目

レーザー光線のクラスによって以下のように対象者と健診項目が規定されます。

レーザー光線業務の健診の頻度は法律では定められていませんが、雇入れ時と配置換え時には以下の対象者において必要になります。

クラス対象者健診項目
クラス1Mなしなし
クラス2Mなしなし
クラス3Rレーザー業務に常時従事する労働者
(条件あり)※1
・視力検査
・前眼部(角膜、水晶体)検査
クラス3Bレーザー業務に常時従事する労働者・視力検査
・前眼部(角膜、水晶体)検査
クラス4レーザー業務に常時従事する労働者・視力検査
・前眼部(角膜、水晶体)検査
・眼底検査

※1:(400nm ~ 700nm の波長域外のレーザー光線を放出するレーザー機器に限る)

クラス1M,2Mではレーザー光の特殊健診は義務付けられていません。3Rでは健診対象者は条件づきですが、クラス3B,4をあつかう労働者は全員がレーザー光線特殊健診の対象です。

その他の安全対策と管理事項

健康診断の他にも安全や衛生について配慮しなければいけない点が数多くあります。

クラス安全対策項目管理項目
クラス1Mレーザー光路は作業者の目の高さを避けて設置することなし
クラス2Mレーザー光路は作業者の目の高さを避けて設置することなし
クラス3Rレーザー光路は作業者の目の高さを避けて設置すること
(400nm ~ 700nm の波長域外のレーザー光線を放出する場合、レーザー光路は可能な限り短く、折れ曲がる数を最小にすること)
なし
クラス3Bレーザー光路は作業者の目の高さを避けて設置すること
(レーザー光路の末端は適切な反射率と耐熱性を持つ拡散反射体または吸収体とすること)
・レーザー機器管理者の選任
・レーザー管理区域の設定と管理
・保護具の点検、整備、使用状況の監視
・長袖、長ズボンの着用
クラス4レーザー光路は作業者の目の高さを避けて設置すること
(レーザー光路の末端は適切な反射率と耐熱性を持つ拡散反射体または吸収体とすること)
緊急停止スイッチの設置
警報装置の設置
シャッターの設置
インターロックシステムの設置
・レーザー機器管理者の選任
・レーザー管理区域の設定と管理
・保護具の点検,整備,使用状況の監視
・レーザー機器の点検、整備、記録の保存
・労働衛生教育の実施と記録の保存
・長袖、長ズボンの着用

レーザー光線のクラスが上がるほど安全対策を強化していかなければいけません。

レーザー光線は反射しない限りは見えません。一方で照射されると高エネルギーに晒されることになります。光が思わぬ方向に屈折して眼や皮膚に当たらないように万全な対策をする必要があります。

厚生労働省が発布しているレーザー光線による障害の防止対策についても参照されてみてください。

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この記事を書いた人

株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役・産業医 岩見謙太朗

北海道大学医学部を卒業後、日本最北端の地、稚内にて臨床医として研鑽を積む。
製造業系、福祉系の事業所にて産業医実務を積み、株式会社いわみ産業医事務所として独立。産業医業務のみならず健康経営コンサル業務、人材採用コンサルティングを行う。僻地の病院の人材採用を倍率1倍以上にV字回復させた実績もある。

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