【製造業必見!】事業所の作業環境測定を徹底解説!【産業医がわかりやすく解説】

目次

はじめに

有害業務を行う作業現場では、作業環境の実態を把握するため空気環境中の有害物質濃度を測定しなければいけません。有害物質は非常に多くの種類があるため様々な作業環境測定が法律で義務付けられています。

今回は複雑な作業環境測定の対象物質や決まり事項についてわかりやすく紹介していきます。

作業環境測定の手順

作業環境測定は次の4つの手順で行われます。

① デザイン測定対象、日時、測定する単位作業場所を決定する
② サンプリング作業環境中の有害物質を試料として採集する
③ 分析試料に応じた分析手法を用いて分析・評価する
④ 管理区分決定分析結果をもとに管理区分を決定

作業環境測定の対象業務

作業環境測定を実施しなければいけない作業は次のようになります。

①測定項目②測定頻度③記録の保存期間がそれぞれ定められています。

作業場測定項目頻度保存年数
坑内作業場炭酸ガスの濃度1月以内ごとに1回3年
気温半月以内ごとに1回3年
通気量半月以内ごとに1回3年
粉じんを著しく発散する屋内作業場空気中の濃度および粉じん中の遊離けい酸含有率6月以内ごとに1回7年
暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場気温、湿度、ふく射熱半月以内ごとに1回3年
著しい騒音を発する屋内作業場等価騒音レベル6月以内ごとに1回3年
中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物で、事務所の用に供されるものCOおよびCO2の含有率、室温および外気温、相対湿度2月以内ごとに1回3年
放射線業務を行う管理区域外部放射線による線量当量率または線量当量1月以内ごとに1回5年
放射性物質取扱作業室空気中の放射性物質の濃度1月以内ごとに1回5年
特定化学物質(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等第1類、第2類物質の空気中の濃度6月以内ごとに1回3年
(特別管理物質:30年間)
特定有機溶剤混合物を製造し、または取り扱う屋内作業場空気中の特別有機溶剤および有機溶剤の濃度6月以内ごとに1回3年
石綿等を取り扱い、もしくは試験研究のため、または石綿分析用試料等を製造する屋内作業場石綿の空気中における濃度6月以内ごとに1回40年
一定の鉛業務を行う屋内作業場空気中の鉛の濃度1年以内ごとに1回3年
酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場第1種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素の濃度作業開始前等ごと3年
第2種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあっては、空気中の酸素および硫化水素の濃度作業開始前等ごと3年
有機溶剤(第1種有機溶剤または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場当該有機溶剤の濃度6月以内ごとに1回3年

作業環境測定の記録は次の事項を保存しなければいけません。

  1. 評価日時
  2. 評価箇所
  3. 評価結果
  4. 評価を実施した者の氏名

出典:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-21-5-0.htm

記録の保存期間は一般的に3年間です。

しかし以下のような有害性の高い業務については保存期間が長く設定されます。

  • 石綿を取り扱う業務:40年
  • 粉じんを著しく発散する屋内作業:7年
  • 放射線業務 /線源取り扱い業務:5年

管理区分の取り扱い

管理区分は管理基準や管理濃度によって第1,2,3管理区分のいずれかに分類されます。

それぞれの第1,2,3管理区分は次のような位置付けにあります。

第3管理区分:作業環境管理が適切でなく、直ちに改善する必要がある状態

第2管理区分:作業環境管理に改善の余地がある状態

第1管理区分:作業環境管理を適切に行えている状態

出典:作業環境評価基準の適用について(基発第六〇五号)

それぞれ第1,2,3管理区分に対する法律で定められた対応を紹介します。

第3管理区分

直ちに施設、設備、作業工程又は作業方法の点検、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するための対策を講じ第1又は第2管理区分となるようにしなければならない。

第2管理区分

直ちに施設、設備、作業工程又は作業方法の点検、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するための対策を講ずるように努めなければいけない。

第1管理区分

さらなる改善、現状の維持に努める。

評価記録の周知

作業環境測定の結果は労働者に周知しなければいけません。

周知内容は法令で次のように決められています。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。
  • 書面を労働者に交付すること。
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

出典:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-21-5-0.htm

簡単にまとめると、作業環境測定結果を掲示板や通知書、メールやインターネットを用いて労働者に通知する必要があります。

まとめ

作業環境測定は取り扱う物質によって様々な種類があるため個別対応が大変ですが、労働者の安全衛生を守る上で重要な項目ですので本ページを参考にされつつ取り組んでいただければと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役・産業医 岩見謙太朗

北海道大学医学部を卒業後、日本最北端の地、稚内にて臨床医として研鑽を積む。
製造業系、福祉系の事業所にて産業医実務を積み、株式会社いわみ産業医事務所として独立。産業医業務のみならず健康経営コンサル業務、人材採用コンサルティングを行う。僻地の病院の人材採用を倍率1倍以上にV字回復させた実績もある。

コメント

コメントする

目次