酸素欠乏危険作業の事故防止対策 【産業医が徹底解説】
はじめに
トンネルや下水道などの酸素濃度が低くなったり硫化水素が発生しやすい場所では酸素欠乏症や硫化水素中毒が発生しないように対策を行わなければいけません。今回は以下の3つのテーマで酸素欠乏危険作業と事故の予防対策について解説していきます。
・酸素欠乏・硫化水素中毒が発生しやすい場所
・酸素欠乏危険場所での作業主任者の配置
・作業環境測定の実施期と測定内容
酸素欠乏・硫化水素中毒が発生しやすい場所
酸素欠乏による災害を防止するためにはいくつか重要なことがありますが、中でも「どのような場所が危険なのか」を知っておくことは非常に大切です。酸素欠乏症等防止規則の別表第六で詳細に規定されています。
酸素欠乏危険場所
多様な作業場所が酸素欠乏危険場所として挙げられていますが
酸素欠乏危険作業は大きく2種類に分けられます
区分 | 作業 |
---|---|
第1種酸素欠乏危険作業 | 酸欠の危険がある場所での作業 |
第2種酸素欠乏危険作業 | 酸欠および硫化水素中毒の危険がある場所での作業 |
硫化水素が発生している場所は腐卵臭がしますが、酸素欠乏のみが起きている場合は嗅覚などの感覚では発見することはできません。
酸素欠乏危険場所での作業主任者の配置
酸欠や硫化水素中毒の恐れがある現場(酸素欠乏危険場所)では作業員の安全を守るために酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者を選任しなければいけません。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者になるためには試験と実技試験で構成されている講習を受講しなければいけません。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の業務には次のの4つがあります。
- 労働者が酸素欠乏等の空気を吸入しないように、作業の方法を決定し労働者を指揮する
- その日の作業を開始する前、再び作業を開始する前、労働者の身体、換気装置等に異常があったときに、作業を行う場所の空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定する
- 測定器具、換気装置、空気呼吸器等の 酸素欠乏症等を防止するための器具又は設備を点検する
- 空気呼吸器等の使用状況を監視する
作業環境測定の実施と測定内容
酸素欠乏危険場所の作業環境測定は酸素欠乏危険作業主任者(第1種酸素欠乏危険作業)もしくは酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者(第2種酸素欠乏危険作業)が行わなければいけません。
実施タイミング
大きく3つのタイミングで行う必要があります。
- その日の作業を開始する前
- 再び作業を開始する前
- 労働者の身体、換気装置等に異常があったとき
測定方法
【測定方法の基準】
JISに定める規格に適合する酸素濃度計および酸素濃度警報計か、検知管方式による酸素検定器またはこれらと同等以上の性能を有する測定機器を用いて測定する必要があります。
【測定値の基準】
・酸素濃度とリスク
酸素濃度 | 症状など |
---|---|
21% | 通常の空気 |
18% | 安全限界。連続換気が必要 |
16% | 集中力の低下やミスの増加。頭痛や吐き気など |
12% | 目眩や筋力低下など |
8% | 失神昏倒。7分から8分以内に死亡 |
6%以下 | 瞬時に昏倒。呼吸停止・死亡 |
・硫化水素とリスク
硫化水素濃度 | 症状など |
---|---|
0.3ppm | 臭いを感じる濃度。腐った卵のような臭い。 |
3~5ppm | 不快臭に変わる。 |
10ppm | 許容濃度・眼の粘膜刺激下限界。 |
20~30ppm | 嗅覚が麻痺して、臭いがわからなくなる。気管支炎・肺炎・肺水腫を起こすケースも。 |
100ppm | 長時間吸い続けると命を落とす場合も。 |
700ppm | 脳神経に作用し、意識障害や呼吸麻痺。死亡の可能性。 |
5000ppm | 即死の危険 |
まとめ
下水工事やトンネル工事現場にて酸欠による事故が毎年発生しております。
作業主任者を選任し、酸素や硫化水素濃度を必ず確認し適切な対策をとるようにしましょう!
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