メンタル不調の従業員が休職を拒否!会社はどう対応すればいい?精神科産業医が徹底解説

「体調は大丈夫です」 

 「休むとお金がなくなるので…」――

メンタル不調が疑われても従業員本人が休職を頑なに拒むケースは珍しくありません。


しかし 会社には安全配慮義務 があり、労働者の健康と安全を守る責務があります。

体調不良を放置すればさらなる悪化や周囲への悪影響も招きかねません。

体調不良で就業が難しい従業員が、スムーズに休職入れる手順を紹介します。

目次

会社が取るべきステップ

No会社のアクション目的担当者               
1就業規則の再確認と整備休職命令の要件・手続を明文化し“強制力”を担保人事・法務
2管理職への早期発見トレーニング兆候を見逃さず産業医面談へつなぐ産業医・人事
3客観データの収集勤怠・パフォーマンス等 “医学的判断” を裏付け人事
4産業医面談の即時設定症状・就業可否を評価、主治医への照会方針を決定産業医
5主治医意見書の取得「就業困難」の医学的妥当性を確定産業医・主治医
6社内協議で最終方針を決定休職勧奨 or 配置転換など代替案を整理人事・上司
7本人説明 & 支援策提示傷病手当金・復職プログラムを示し納得度を高める上司・人事
8休職命令書の検討拒否が続けば“業務命令”として文書交付人事
9休職中〜復職後のフォロー定期連絡・リワーク・段階復帰で再発防止産業医・上司

休職命令は「ペナルティ」ではなく

健康回復を最優先する会社の措置であるということを

本人と管理職の双方に繰り返し伝えましょう。

ステップ別の実務ポイント

1.就業規則の再確認と根拠整備

休職手続きを就業規則に細かく規定しておけば、本人が拒否しても会社は業務命令として休職を発令できます。逆に規定が曖昧だと、のちの紛争で「権限逸脱」とみなされるリスクがあります。

2.管理職トレーニング

「遅刻が増えた」「報告の語尾が荒い」など微妙な変化は現場が最も気づきやすいポイント。研修で 早期気づき→産業医面談 のルートを徹底させましょう。

3.客観データの収集

勤怠記録・業務ミス・顧客クレームなど、本人の主観に左右されない事実 を集めておくと、産業医が医学的判断をしやすくなり、後の休職命令の妥当性も説明しやすくなります。

4.産業医面談の即時設定

メンタル不調は「夜間の中途覚醒」「ストレスの原因」など、本人が言いづらい症状が多いもの。

産業医は面談でリスクを把握し、必要に応じて「就業上の措置に関する意見書」(産業意見書)を提出します。

5.主治医意見書の取得

会社が最終判断に迷う場合や、産業医からみた見解を主治医に伝えたい場合は 産業医が主治医に対して「情報提供書」を作成します。

具体的な職種、業務内容や就業上での困りごと、依頼内容を記載し、従業員本人の体調を主治医に評価してもらいます。

6.社内協議で最終方針を決定

人事・上司・産業医が同席する会議で、本人の現在の体調と勤怠、主治医の意見書や診断書、会社としてのサポート体制などをなどをもとに今後の方針を議論しましょう。本人と会社が方針について納得した場合は次のステップに移ります。

7.本人説明 & 支援策提示

拒否理由の多くは「経済的不安」「昇進が遅れる不安」「病識の乏しさ」。会社側は 傷病手当金や企業補償、リワークプログラム を資料で示し、休職のメリットを視覚化しましょう。

8.休職命令書の検討

それでも拒む場合は、就業規則を根拠に 文書で休職命令を行うことも検討します。
発令理由・期間・手当・復職判定手順を明記し、本人交付+保管します。医学的な根拠に基づいて客観的に判断するために産業医の意見も求めましょう。

9.休職中〜復職後のフォロー

休職中の動きについては次のことを重点的に行いましょう。

  • 月1回の近況ヒアリング(オンライン可)
  • リワーク参加 や CBT 等の再発予防策を案内
  • 復職時は 産業医が就業可否判定。短時間勤務→通常勤務へ段階的に戻す。

詳しくはこちらの記事で詳しく解説します。

すぐ使える!会社用チェックリスト

次の項目をチェックして、

体調不良を起こしてしまった社員がスムーズに休職に入れるように事前に準備をしておきましょう。

□就業規則に休職発令手続が明文化されている
□管理職が「メンタル兆候と相談ルート」を理解している
□主治医意見書の依頼フォーマットが用意されている
□休職命令書のテンプレートを最新判例に合わせて更新
□休職中の連絡ルール(頻度・担当者)が決まっている
□復職判定会議のメンバーと議事録様式が定義されている

まとめ

メンタル不調者が休職を拒否した際、会社がやるべきことは 「医学的妥当性を確認し、プロセスを透明化し、本人が安心できる支援策とセットで提示する」 ことが重要です。

  1. 就業規則の休職に関する整備行う
  2. 産業医・主治医と連携して医学的根拠を固める
  3. 経済・キャリア不安を解消する情報を提示しする
  4. それでも拒否なら業務命令として発令する
  5. 休職中〜復職後も計画的にフォローする

これらをチームで進めることで、従業員の回復と企業リスクの最小化を同時に実現できます。

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この記事を書いた人

精神科医、日本医師会認定産業医

国立国際医療研究センター病院にて初期研修修了。
その後精神科専攻医として急性期の精神病症状への対応から、慢性期疾患に対する包括的な支援まで幅広い臨床領域に従事している。
特に、就労世代の適応障害やうつ病などの気分障害への介入に注力しており、早期発見・早期支援を通じた社会復帰の促進を重視している。

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