【産業医が解説】エイジフレンドリー補助金を活用した熱中症対策【2026年度向け】

1.高齢化する職場で、熱中症リスクが高まっている

高齢になると、体内の水分量が減少し、さらに発汗や体温調節機能が低下します。
そのため、暑い環境でも「汗をかきにくい」「のどの渇きを感じにくい」といった状態になり、
熱が体にこもりやすく、熱中症を発症しやすいという特徴があります。

実際、熱中症による労働災害の多くは60歳以上の労働者で発生しています。
屋外作業や工場などの暑熱環境下では、長年の経験や責任感から無理をしてしまい、
症状の進行に気づくのが遅れるケースも少なくありません。

現場を見ていると、「自分はまだ大丈夫」と思って作業を続けるベテラン社員ほど危険です。
こうした高齢労働者の安全を守るために、国が支援する制度が「エイジフレンドリー補助金」です。

2.国の支援制度「エイジフレンドリー補助金」とは

厚生労働省が実施する「エイジフレンドリー補助金」は、
高年齢労働者(60歳以上)が安全に働ける職場環境を整備するための補助制度です。
2025年度は以下の3コースで募集されています。

コース名補助率上限額対象
総合対策コース4/5100万円高年齢労働者(60歳以上)
職場環境改善コース(熱中症予防含む)1/2100万円高年齢労働者(60歳以上)
転倒防止・腰痛予防運動指導コース3/4100万円全労働者

なかでも「職場環境改善コース(熱中症予防対策プラン)」が、暑熱環境の現場に最も有効です。


3.熱中症予防対策プランの補助対象

補助対象となるのは、次のような体表面冷却や環境改善に関わる設備ですエイジフレンドリー。

▪体表面の冷却を行うための機器

  • 冷却服(体温を下げる機能付きウェア)
  • 作業場・休憩所に設置するスポットクーラー
     (熱排気を屋外に逃がせる構造・耐用年数5年以上が条件)

▪効率的に身体冷却を行うための機器

  • 冷凍ストッカー(-20℃程度、最大400Lまで)
     ※飲料やや保冷剤自体の購入は補助対象外。

▪健康管理デバイス

  • 熱中症リスクを検知できるウェアラブルデバイス
     (深部体温を推定でき、通信機能により集中管理が可能なもの)

▪環境モニタリング

  • WBGT指数計(JIS Z 8504/B 7922準拠)

これらの導入費用が補助対象となり、上限100万円(補助率1/2)までサポートされます。

4.申請のポイントと注意点(実際の導入スケジュール)

  1. 交付決定前に発注した場合は補助対象外
     審査→交付決定→発注→実施の順序を必ず守る必要があります。
     申請書提出から交付決定まではおおむね約2か月かかるため、時間に余裕を持った準備が重要です。
  2. 対象は60歳以上の労働者が常時1名以上勤務する事業場
     労災保険適用事業で、1年以上継続して事業を行っている必要があります。
  3. 申請受付は2025年5月15日〜10月31日(消印有効)
     ただし、予算に達し次第締切となります。実際の現場では、募集開始直後の5〜6月に申請した企業は、7〜8月頃に交付決定・入金を受けてその夏の対策に間に合うケースが多いです。 一方、申請が9〜10月にずれ込むと、交付決定が秋以降になり、実際の活用は翌年の夏になってしまいます。
    「春の準備が夏の安全を守る」と心得て、早めの申請がおすすめです。
  4. 産業医・労働衛生コンサルタントとの連携が重要
     熱中症対策が“単なる設備導入”で終わらないよう、
     リスクアセスメントや効果評価を専門家と行うことが推奨されています。

5.まとめ:補助金で「安全投資」を後押しする

熱中症対策は「労働災害防止」だけでなく「人材確保」の観点からも重要です。
高齢社員が安心して働ける職場づくりは、若手への安心感にもつながります。

エイジフレンドリー補助金を上手に活用し、
「人にやさしい職場環境」を科学的・経営的に整えることが、これからの時代の安全衛生です。

職場の熱中症対策についてはいわみ産業医事務所にご相談ください!

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この記事を書いた人

株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役・産業医 岩見謙太朗

北海道大学医学部を卒業後、日本最北端の地、稚内にて臨床医として研鑽を積む。
製造業系、福祉系の事業所にて産業医実務を積み、株式会社いわみ産業医事務所として独立。産業医業務のみならず健康経営コンサル業務、人材採用コンサルティングを行う。僻地の病院の人材採用を倍率1倍以上にV字回復させた実績もある。

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